忘れやすい日々のための映画ブログ

忘れっぽいので、過ごした日々・趣味の時間を大切にしていきます。

自分自身を越えていく/クリード チャンプを継ぐ男

ロッキーもランボー日曜洋画劇場でちらっと観た程度で、ちゃんと観たことはなかったのでちょっと迷ったが、「ロッキー観てなくても楽しめるらしい」&「かなり面白いらしい」という前評判を信じて鑑賞。

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結論、良かった
どのくらい良かったかというと、鑑賞後のその足でマイナス5度の街ナカを自転車で疾走して、ロッキーをレンタルしに行くくらい良かった(ラスト1本)。

ちなみに過去作を観なくても良い(劇中の登場人物たちから主人公に語られるカタチで初見者でもわかる親切さ)ですが、観たほうがもっと良いです。

シルベスター・スタローンを一躍スターに押し上げた代名詞「ロッキー」シリーズの新たな物語。ロッキーのライバルであり盟友であったアポロ・クリードの息子アドニス・ジョンソンが主人公となり、スタローン演じるロッキーもセコンドとして登場する。自分が生まれる前に死んでしまったため、父アポロ・クリードについて良く知らないまま育ったアドニスだったが、彼には父から受け継いだボクシングの才能があった。亡き父が伝説的な戦いを繰り広げたフィラデルフィアの地に降り立ったアドニスは、父と死闘を繰り広げた男、ロッキー・バルボアにトレーナーになってほしいと頼む。ボクシングから身を引いていたロッキーは、アドニスの中にアポロと同じ強さを見出し、トレーナー役を引き受ける。アドニス役は「フルートベール駅で」の演技が高く評価されたマイケル・B・ジョーダン。同じく「フルートベール駅で」で注目された新鋭ライアン・クーグラーが、監督・脚本を務めた。(映画.com)

▼軽くネタバレ
この133分の物語は「(継)母と子」、「亡き父と子」、「父のライバルとその子」、「夢を目指すもの同士」という、4つの軸を同時に回して、すさまじい速さでありながら、抜群の安定感を持ってラストへと突き進んでいく。全シーンに無駄がなく、テンポが良く、登場人物の背景をしっかり描いていた。

 

特に刺さったのは、主人公が親父を越えようと葛藤するシーン。
長嶋茂雄、一茂。野村克也、克則。彼らがそうであったように親父を超えるのは難しい(ケン・グリフィー・ジュニアのようなのは本当に稀なんだろう)。

ただアドニスの場合はもっと大変だ。だって親父がもうこの世にいない。
その姿はyoutubeで観られるだけ。
父のアポロはアドニスの生まれる前に亡くなっており、触れたことも、話したこともない。けれど父親は憧れであり、目標になっていたようで(こんな父親になりたい)、
金融マンとして成功していた(昇進したばかりの)主人公はあっさりと仕事を辞め、
親父と同じ道に進むことを選択する。

 

あえて偉大だった親父と同じ道を進む選択だけで拍手喝采。
しかしアドニスはアポロのライバルロッキーに師事を仰ぎ、勝利を目指す。
この2人のやりとりもまた父と子のよう。ロッキーは途中で癌が発覚するが、
アドニスの「一緒に闘おう」に応えて闘病開始(病院内でトレーニングはちょっと笑った)。

そのロッキーがシャドウボクシングをアドニスにアドバイスする。
「鏡の中の男(アドニス自身)は打てば打ち返してくる。避けてこいつを倒せ(うろ覚え)」
ロッキーが言いたいのはつまりボクシングは自分との闘いであると。親父を超えるというか、自分を超える(打ち勝つ)んだ!と、勝手に解釈。

 

ファイティングシーンのカメラワークは素晴らしく、ずっと前のめりで鑑賞。
音楽も良い。主人公の彼女役のテッサもかわいい。アドニスを演じるマイケル・B・ジョーダンの肉体がすごい(恋人まで1%のキャラも脱ぎキャラで筋肉君だったけど、それ以上にグレードアップ)。


もう、とにかく観て欲しい。

重い映画編:年間ランキング/2015

重い映画(個人的に大好き)年間ランキングです。

直近で観たナイトクローラーがNO.1。

エントリーした10作品中9作品はきちんと劇場で観て感想を書いていました。

「恋人たち」がまだ盛岡に来ておらず、未見なのが残念ですが、来年の楽しみとします。

1位 ナイトクローラー

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2位 サンドラの週末

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3位 フォックスキャッチャー

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4位 セッション

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5位 百円の恋

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6位 きっと星のせいじゃない

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7位 ソロモンの偽証

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8位 日本のいちばん長い日

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9位 オン・ザ・ハイウェイ その夜86分

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10位 海にかかる霧

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年間ランキング/2015

今年もあっという間に終わってしまった。今年の総鑑賞数は186本。

洋画中心ですが、邦画も韓流も観ました。でも結局ランキングは洋画だらけ。 

1位 マッドマックス 怒りのデスロード

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これを劇場で観られたのは幸せだった。3行で説明できる内容を、こんなに壮大な映画にできるなんてすごい。しかも監督のジョージミラーは70歳。年齢じゃない。熱意。

3Dじゃなくて、2Dでもう一回観に行きたい。 

 

2位 アメリカン・スナイパー

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もう予告編を観てからというもの公開を心待ちにしていた映画。

期待しすぎると外すんだけど、これはびゅーんと遥か上を超えてきた。

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3位 ベイマックス 

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小学生たちに混じって、一人で観に行って号泣。吹き替えで観て良かった。

心があたたまる幸せな映画。俺もベイマックス欲しい。

本編の前の「犬とごちそう」も名作だった。

 

4位 ワイルドスピード スカイミッション

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ラスト数分のために、それまでのド派手なアクションがあると言っても過言ではない。

映画館はラスト涙と感動で包まれていました。本当に。

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5位 バードマン

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映画館で予告を見せられすぎて、嫌になり、本編を劇場で観なかったことを後悔。

ラストシーンは「インセプション」とか「シャッターアイランド」と同じ。

もわっとする。「えっ? あれって??」と考えさせられる。だがそれが良い。

 

6位 ザ・ゲスト

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「サプライズ」の監督と脚本家が組んでいるということで鑑賞。

これは素晴らしい設定。予告編観ない方が楽しめるかも。

 

7位 イントゥ・ザ・ストーム

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こうした自然災害系は「ふーん」て感じになることが多いけど、

DVDで観てもかなりの迫力。ストーリーもちゃんとあって、かなりドキドキできた。

映画館で観たかった作品。

 

8位 マイ・インターン

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プラダを着た悪魔」と同じテイストの予告にわくわくして観に行って、

これもその期待を超えてきた作品。気持ちのいい、すかっとした映画。

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9位 シェフ 三ツ星フードトラック始めました

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オススメされて観た作品。自分のやりたいこと、家族のこと。両立しないようだけど、両立させて、みんなハッピーになっちゃう映画。自分で事業やるのって大変だけど、実り多くて、人生において大切なアクションだなあ。

 

10位 オール・チアリーダーズ・ダイ

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もはや設定がぶっ飛んでた。笑うしかない。そんな映画。

 

次点 

セッション

フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ

 

2015年もフォーラム盛岡さんを中心にたくさんの映画を観ることができました。

映画館のある街って素晴らしい。感謝。

12月に観た映画/16本

12月は16本鑑賞。 

予告犯(邦画)→ヒューマン。完全にヒューマン映画だった。正直で真っ直ぐな人間が報われる訳ではない。でもそんな(彼らにとって)不公平な社会に一矢報いようとする話。生きるにはしたたかさが必要。そう思わせられた。

 

国際市場で会いましょう(韓流)→ヒューマン。再開発エリアに店をもつおじいちゃん。地上げ屋が来ても相手にしない。息子・娘夫婦にも売ればいいのにと言われる。でもそれが出来ない理由を朝鮮戦争からの物語とともに明かして行く。ちょっと長いけど、最後泣いちゃう。

 

イニシエーション・ラブ(邦画)→オススメ! ホラー。ミステリーだけど男にすれば完全ホラー。遠距離恋愛って怖い。小説を先に読んでいたので、オチはわかっていたけど、上手く映画にしている。ひたすらに前田敦子がかわいい。

 

SEXテープ→コメディ。過激タイトルだが、完全にコメディ。倦怠期夫婦がかつての激しさを取り戻すために、SEXを撮影したことが事件の発端。

ソニピク配給なのに劇中でアップル製品使ってて、「あれ?」と思ったけど、観ているうちに理解。それも含め楽しむ映画です。

 

007慰めの報酬&007スカイフォール→スペクターを鑑賞直後に観たくなった。個人的にはスペクター<カジノロワイヤル<スカイフォール慰めの報酬

 

明鳥(邦画)→コメディ。周囲の「名作!」の声につられてレンタル。だが、自分はハマれなかった。残念。

 

脳内ポイズンベリー(邦画)→オススメ! コメディ。三十路女が男との恋愛にあたって脳内会議を開催する。終始「あるあるー!」と共感の嵐の中で鑑賞。彼女と観たりすると盛り上がれるかもね!涙。ラストはちょっと言いたいことがあるけど。

 

靴職人と魔法のミシン→ヒューマンSF。靴修理屋が主人公。ある日、ひょんなことから先祖代々の旧式修理機で靴を直し、その靴を履いてみたら、その人になっちゃった!でも靴脱いだら元に戻れるー!というトンでも設定だが、これが良い。靴修理屋が比較的真っ当な性格のアダムサンドラーなので安心して観られます。スティーブブシェイミが老けたのに、ダスティンホフマンは若返って見える映画でもある。

 

ハリーポッターと賢者の石→USJに行く前に一応鑑賞。自分の欲しい物を見せる鏡?を観たら、何が見えるのか気になる。友人と「何が見えると思う」って議論をしたら、「思ってもみないものがうつる鏡なんだからわからないでしょ」と言われてしまった。

 

スティーブン・キング ビッグ・ドライバー→ホラー。アメリカって怖い。ヒッチハイクなんて出来ないよ(ヒッチハイクの映画ではありません)。

 

カリフォルニア・ダウン→パニック。カリフォルニアに大地震が起きる話。全く期待していなかったけど、かなりの迫力だった。

 

ミッション・インポッシブル/ローグネーション→映画館で観たけど、あらためて鑑賞。

 

あいつの声(韓流)→ミステリー。1991年に韓国で実際に起きた話のよう。しかも未解決! 誘拐犯から電話があっても父親は警察に電話しない。そんな感じで韓国の警察は信用されていない時代背景。ちょい長い。てか長い。

 

エイプリルフールズ(邦画)→ヒューマン? いろいろあったけど、みんな大切なものに気づけて良かった!という話。観なくて良い。

 

ナイトクローラー(劇場)→オススメ! サスペンスホラー。サイコパスの話。かなり刺さった。

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11月に観た映画/14本

11月に観た映画は14作品。

▼レンタル編

・パージ
・パージ・アナーキー⇒サスペンス。今年の完全な設定勝ち映画。1年に1度人を殺しても罪に問われない日「パージ」の日が制定されている近未来の話(「赤狩り=RED PURGE」のパージ)。2作品あるけれど、どちらも面白かった。1作目は家の中で、2作目は街の中で。

 

・サンドラの週末⇒ヒューマン。サンドラが自分と向き合い、闘う姿を描いた作品。
敵は自分の中にいる、というのがよくわかる。

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スター・ウォーズ エピソード4 新たなる希望
スター・ウォーズ エピソード5 帝国の逆襲⇒映画を観るタイミングというのは非常に重要であることに気が付かされる。

 

・ドライブ⇒ラブ・ストーリーライアン・ゴズリング観たさに再度鑑賞。クールで口数が少なく不器用な感じが最高。

 

L.A.ギャングストーリー⇒サスペンス。こちらもゴズリング観たさに鑑賞。実際にあった話を元にしているよう。マフィアの大ボスコーエン(ショーンペン)と警察の闘い。

 

ハンガー・ゲーム FINAL レジスタンス⇒アクション。特筆すべき点はなし。

 

・ビッグゲーム 大統領と少年ハンター⇒アクション。荒唐無稽な展開の連続。

だけど少年と大統領の友情が何気に良い。

 

・レフト・ビハインド⇒ヒューマン? SF? 全米で6,500万部を売り上げたベストセラー。聖書関連の話で、ある日いきなり子供をはじめ、人が唐突に消えるところから物語が展開する。ちなみにニコラス・ケイジ主演。日本では全く話題になっていない?レフトビハインド - Wikipedia

 

・善き人に悪魔は訪れる⇒サスペンス。旦那は出張。嫁さんが家に子どもと2人という雨の日に、ひとりの男(しかも前科者)が訪れ…、というよくある設定。最後にちゃぶ台返しがある。

 

・誘拐の掟⇒アクション。探偵(元刑事)のリーアム・ニーソンが、誘拐犯を追い詰めていく作品。あいも変わらずこの手のアクションが多いが、「ラン・オールナイト」よりは良かった。

▼劇場編

・劇場版 MOZU⇒私はTV版が好きです。内容がモリモリすぎて、全部薄い感じでした。


・007 スペクター⇒慰めの報酬スカイフォールを観てから行きましょう。

 

海外TV編
キリング シーズン1⇒サスペンス。久々に目が話せなかった。北欧版?をリメイクした作品。
  主演の女優さんがL.A.ギャングストーリーに出ていた。

向き合ったその先/サンドラの週末

『サンドラの週末』。全くもって興味を引かないタイトルだが、
そのタイトルをつけたことに興味を惹かれてレンタル。

http://img.cinematoday.jp/res/T0/01/97/v1419477671/T0019734p.jpg

ストーリー
体調が思わしくなく休職していたサンドラ(マリオン・コティヤール)は、復帰のめどが立った矢先の金曜日、ボーナス支給のため一人のクビを切らなくてはならないと解雇を通告される。ところが、同僚の計らいで週明けに職員たちが投票を行い、サンドラのためボーナス返上を受け入れる者が半分以上になればクビを回避できるという。その週末、月曜日の投票に向けサンドラは同僚たちの説得するため奔走するが……。 (シネマトゥデイ

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▼感想(軽くネタバレします)
サンドラは弱いです。めちゃめちゃ弱っちい。
彼女は鬱病から復職しようとした矢先に、衝撃の事実を知る。
「サンドラの復職」or「自分たちのボーナス(1,000ユーロ)」かどちかを選ぶという投票が会社でされており、ボーナスで決まっていた事実を知る。ちなみに1ユーロ134円(2015年12月時点)なので、ボーナスは13万円くらいだ。
「同僚は私よりボーナスを選んだ」という事実が、病み上がりのサンドラに追い打ちを掛ける。
サンドラは弱っちいから、そんな衝撃に耐え切れずにすぐ凹む。凹んで無気力になって、逃げようとする。ああ、なんて弱い。(これ、社会人1年目の俺だわ、と。そこに自分を重ねてしまった)

でも同僚も3人くらい仲間になってくれ、サンドラの旦那が闘おう!と。
まずは自分が勤める太陽光パネルの社長に再投票の依頼をしにいく。
社長は「会社が苦しいんだ。競合が悪いんだよ。でも再投票は認める」と言う。
(この言い分が海外っぽいなーと思う。てめえが馘首にしたくせに、競合のせいで取引が減っただと。事実なんだろうけど、企業努力が足りないんじゃないの?と言いたくなるが言える立場にいないので静かにしておく。)

旦那に八つ当たりしながらも、週末に同僚たちの家を1軒ずつ回っていく
(この間、自分の中でサンドラ喚いてばっかりでガキかよ。
でも喚きたい気持ちもわかるわー、という心境が交互にやってくる)。
サンドラは人づてに同僚の住所を探し当て回っていく。
(同僚なのに住所知らねーのかよと思ったけど、自分もそんなもんだなと思い反省)

▼同僚たちの反応
同僚たちを1軒ずつ訪れていく。「私に投票して」と言いにいくわけだ。ここがこの映画の見所だろう。
同僚の反応は様々で、最初からサンドラに味方してくれる人、娘への仕送りでどうしてもボーナスが必要な人、
職場では仲よかったと思ったのに子供使って対応して居留守する人、
意見の違い(というより息子がクズ発言しすぎ)で親子で喧嘩する人、
旦那のいいなり(DV?)でサンドラの味方に立てない人、
契約社員が故にサンドラに投票しないよう主任に脅されている人、
サンドラに「お前なんかいなくても仕事が回るから、投票で勝っても君を雇うかね?」と嫌味を言ってくる人。
断る人は社長同様に「助けたい。でもこっちも苦しいんだ。生活するのにボーナスがどうしても必要だ。
君かボーナスかは会社が選ばせた。私に悪気はない」という回答をする。

みんなボーナスは欲しいだろう。言い分も様々だ。みんな生活の背景や状況が異なるから。そんな中でも協力してくれる人がいる。そのことがサンドラを勇気づけて行く。

最初は「ムリムリ。私なんて無理」だったのが、最後のほうでは自分から行くと言い出す。
これは会社との闘いでも同僚との闘いでもない。

自分との闘いだ。サンドラは「働きたい」という意志がある。
でもそのためには同僚を「説得」をしなきゃならない。

でも断られるのが怖いから、意志を隠して、やる前から逃げようとしていた。断られてあたりまえ、というマインドが大切だと改めて思う。
同僚が自分よりボーナスを取ったという事実に打ちのめされて、立ち上がろうとしていなかった。

でも周囲の助けで立ち上がった。同僚へは自分の気持ちを素直に伝えた(しつこく説得せず、事実だけ伝えた)。すると理解し、協力してくれる人が現れた。この時点でやらずに逃げるというのは間違っているというのがわかる。
そして協力者の存在が彼女を強くし、向き合い続けることで高潔にしていく。

ラスト、彼女は投票であと少しのところで破れる。同僚に感謝し、抱擁し、会社を去ろうとする。
すると、社長に呼ばれる。「ここまで出来ると思わなかったから、契約社員を切って、君を雇う」と提案される。
でも彼女はきっぱりと断る。会社を去る彼女の顔は高潔で一番輝いているように見えた。


自分と向き合って見えるものがある、そんな風に感じさせてくれる映画。

サイコパス/ナイトクローラー

暗闇の中にジェイク・ギレンホールが佇む不気味なポスター。
その手には一台のカメラ。不穏な空気満載の画に興味をそそられ鑑賞。

http://iwiz-movies.c.yimg.jp/c/movies/pict/p/p/f9/c4/167027_01.jpg

 

ストーリー
人脈も学歴もないために、仕事にありつけないルイス(ジェイク・ギレンホール)。たまたま事故現場に出くわした彼は、そこで衝撃的な映像を撮ってはマスコミに売るナイトクローラーと呼ばれるパパラッチの姿を目にする。ルイスもビデオカメラを手に入れ、警察無線を傍受しては、事件現場、事故現場に駆け付ける。その後、過激さを誇る彼の映像は、高値でテレビ局に買い取られるように。やがて局の要望はエスカレートし、それに応えようとルイスもとんでもない行動を取る。 (シネマトゥデイ

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以下感想(軽くネタバレします)
▼どんな話?
一言で言えば、サイコパスの話。
サイコパスのパパラッチが自分の目標を達成していく過程を描いている。
目標達成のためには躊躇せずに犯罪を犯し、人を支配し、欺き、陥れる。
本人は悪いことをしているとは思っていない。当然のことをしていると思っている。

▼ルイスって何者?
ルイスは上述のようにサイコパスだ。
野心に溢れ(そのためには人を陥れる)、勉強家で(相手を支配するため、ビジネス内容や相手の社内での立場などを徹底的に調べ尽くす)、行動力もある(平気で犯罪を犯す。人が死にかけていても助けない)。
とにかく自分は出来ると思っている(「僕は覚えが早い」という台詞が劇中に何回か登場する)。
本人にすればただ「機会」に恵まれていない。だからこんなことになっている。
そして、人の最期や不幸がビジネスになる「機会」に出会い、それをモノにする。完全に。
彼にすれば仕事は何でも良かったんだろう。

それがたまたまパパラッチだっただけだ。

 

▼なぜルイスが生まれたのか?
無職のルイスは定職にありつこうとしていた。
冒頭で盗品(銅や鉄)を廃品回収業者?に売りに行き、
そこの社長に自分を雇うよう実に流暢にプレゼンするが、
「泥棒は雇っていない」と一蹴される(でも主人公が持ってきた盗品は買う)。
また途中TV局のディレクターにも自分を雇うようプレゼンをするが、
ここでも相手にしてもらえない(でも主人公が撮ってきた人の最期を映した映像は買う)。
なぜ盗品を買うのか、なぜ映像を買うのか。それは欲しい人がいるからだろう。
使っているこっちが、観ているこっちが、ルイスを生み出している。

 

最近読んだ下記2作品で紹介されるサイコパスやパーソナリティ障害の思考がそのまま主人公のルイスだった。

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▼ルイスはどうなっていくのか?
特ダネを撮り続け、すべては彼の思いのままになっていく。
対等の立場だったはずがいつの間にか支配され(ディレクターは同僚から「お前はルイスそっくりだ」と言われる)、敵対するものは陥れられ(競合他社は車に細工され、事故にあい、瀕死(死んだ?)。その事故画像を売物にする)、逆らうものは殺され(ルイスは自分の部下が逆らったので、犯人に射殺されるよう仕向けた。そして彼の最期も売り物にする)、国家権力も欺き(警察の聴取にも堂々と嘘をつく。嘘を付くための準備にも余念がない)、自分の会社を守り、大きくするという目標を達成する。

終盤、警察がTV局のディレクターにルイスが撮影した映像を提出するよう要求に来た際には、「撮ったのはあの人。私たちは買っただけ。問題があればあの人に聞いて」と他人事だ。
ルイスが悪いように描かれているが、お互い様だろう、と思ったが、
すでにこの時点でディレクターの思考も結局ルーに支配されてしまっているのだなあと。

ラストシーンでルイスは自分の会社(制服もできあがり、社名入りの立派なバンもある)の新入社員に言う。
「僕は自分が出来ないことを君たちにはさせないよ」

でも彼に出来ないことなんてないのだ。

なにひとつ。自分の手を汚さずに殺人だってできちまうんだ。

 

一緒に働く予定の若者たちに幸あれ、と絶望した気分になった。