エゴしかない/セッション
前評判が半端無く高かった本作。
それなりに期待していたけど、期待以上のものが返って来た。観て損はなし。
名門音楽学校へと入学し、世界に通用するジャズドラマーになろうと決意するニーマン(マイルズ・テラー)。そんな彼を待ち受けていたのは、鬼教師として名をはせるフレッチャー(J・K・シモンズ)だった。ひたすら罵声を浴びせ、完璧な演奏を引き出すためには暴力をも辞さない彼におののきながらも、その指導に必死に食らい付いていくニーマン。だが、フレッチャーのレッスンは次第に狂気じみたものへと変化していく。
以下ネタバレ感想。
この映画の演奏シーンには観客がほとんど映らない。
観客が映らないってのは、自分たちのことしか見えてないって表現なのか。
絶賛されるラストなんかほとんどフレッチャーとニーマン2人の世界。
(というかニーマンのハイパー自己満タイム)
この映画で映るのは
・罵声を浴びせる人と浴びせられる人
・自分の考えを一方的に話す人とそれを聞かされてうんざりする人
全体を通して、ドラム音と罵声のジェットコースタームービーな訳だけれども、
ラスト以外に見所が多い。
特に圧巻(大好き)だったのはニーマンがめちゃめちゃかわいい彼女に別れを伝えるシーン。
ニーマンが「俺には音楽があって、今はとても忙しい。君はそのうち『なんで会ってくれないの?』と言い出す。それは僕の邪魔になる。だから別れよう」というシーン。
彼女は唖然として「私があなたの邪魔をするってあなたは思うの?」と訊ねる。
ニーマンは平然と「その通り」と回答し、彼女は「何様なの?」とぶち切れ、「別れましょう。別れて正解」というようなことを言って去って行く。
ちなみにニーマンは自分から告白して付き合っています。
この別れ話のときのニーマンは申し訳ないという気持ちの欠片もない、殴りたくなるくらいのふてぶてしい面構えだったが、ある意味突き抜けていて清々しさすら感じた。
あと親戚?同士で食事をしているときに自慢大会が始まったシーン。
ニーマンは(フレッチャーに気に入られているという自負からか)、
アメフトかなんかで頑張っている親戚を
「どうせ3部だろ(遊びだろ。俺は違う)」と見下す。
せっかくなんだから「すごいじゃん!おれも頑張るよ」てな具合にほめればいいのにチンケなプライドが顔を出しちゃう。
美味しく飯を食っていたのに、彼女編に続いて、また糞みたいな発言をして親戚一同は飯マズ状態に。普段は息子の味方のニーマンの親父が見かねて「お前はプロから誘いあるのか?」と突っ込んで主人公も飯マズを味わうことに(謝罪せず離席)。
というわけでこの映画はそんなシーンのオンパレード(大好物)。
一番ショックだったのは、ニーマンやフレッチャーの気持ちがなんとなくわかるなあ、と感じたこと。自分を追い込むことでしか、達成できない何かがある、と思っている。
というか追い込めば出来ないはずがないと思っている。
でもそれってそこにいくまでに失うモノが多すぎる。でも本人たちはそれでも良いと思っているし、そういうものだと認識している。
そんな感じで「ストイックに何かやっている俺かっけえ」と思っている人ってのは、
おおよそ糞みたいな発言をしてしまう奴で周りにとって迷惑ということがよくわかる。
それは結局自分しか見えていないからなんじゃないかと。気をつけよう。
そう思いつつも最後までブレない人はやっぱり強いなと。