日本のいちばん長い日/想いやる気持ち
緊迫感のある予告編に惹かれて鑑賞を心待ちにしていた作品。
特に印象的なのは松坂桃李のちょっと怖いくらいに純粋そのもののな目線。
予告編の僅か数秒ながら、忘れられないでいた。
解説
昭和史研究の第一人者・半藤一利の傑作ノンフィクション「日本のいちばん長い日 決定版」を、「クライマーズ・ハイ」「わが母の記」の原田眞人監督が映画化。1945年8月15日に玉音放送で戦争降伏が国民に知らされるまでに何があったのか、歴史の舞台裏を描く。太平洋戦争末期の45年7月、連合国軍にポツダム宣言受諾を要求された日本は降伏か本土決戦かに揺れ、連日連夜の閣議で議論は紛糾。結論の出ないまま広島、長崎に相次いで原子爆弾が投下される。一億玉砕論も渦巻く中、阿南惟幾陸軍大臣や鈴木貫太郎首相、そして昭和天皇は決断に苦悩する。出演は阿南惟幾役の役所広司、昭和天皇役の本木雅弘をはじめ、松坂桃李、堤真一、山崎努ら。(映画.com)
結論として、観て良かった。
予告編そのままの緊迫感はもちろんのこと、その背景が理解できた。
▼以下ネタバレ感想
この映画から感じたのは、
いかなる場合も自分を無にして、相手を思いやる大切さである。
▼難題
鈴木貫太郎内閣は1945年の4月に組閣され、4ヶ月後の8月15日に終戦を迎える。
つまりは、終戦のため組閣された内閣。その内閣が刻一刻と迫りくる見えない時間との戦いをする。
僅か4ヶ月だが、誰も味わったこともない苦痛、ストレスを感じ続けたことが良くわかった。
誰も成し遂げたことのない、戦争の終結、降伏をしなければならなかった。
▼阿南陸相の苦悩
特に陸軍大臣の阿南惟幾は苦しかっただろう。
終戦を任務とする内閣に組み込まれた瞬間に死を覚悟しただろうと思う。
戦争を主導している陸軍の大臣であるにも関わらず、天皇は終戦を希望すると仰る。
いま終戦に向かうこの瞬間も命を懸け、敵と戦い続けている将兵たちがいる。しかもその将兵たちは、まだ自分たちはやれると思っている。一部の若手将校たちは阿南惟幾が大臣になったことで、本土決戦ができると士気が高揚したと言われている。
※阿南陸相が戦争継続派だったのか、終戦派だったのかはわからないが、私自身には後者のように思えた。
どうやって落としどころを付けるべきか。終戦へ向け動く姿を部下に見せれば、前線で働く将兵の気持ちを傷つけることになる。
またそうなればクーデターは免れない。クーデターが起きれば、本当の意味での亡国となってしまう。
だが部下たちは戦わずしても負けることが亡国だと思っている。本土決戦をして、少しでも有利な条件を引き出すべきであると。
血気盛んな若手将兵たちを抑えつつ、終戦を迎えるにはどうすべきか(実際、宮城事件が起きている)。
終戦間際の宮城周辺は非常に危険な状況だというのを物語るシーンがある。
閣議で天皇が読み上げる玉音放送の文章を読み合わせするシーンだ。
阿南陸相は文面にある短いセンテンスの変更を迫る。書記官長や他の大臣は変更の必要ない、というが、阿南陸相は譲らない。
それが陸軍で戦う将兵たちの気持ちを傷つけるものだと知っていたからだ。
若手将校たちも内閣も国を想う気持ちは変わらなかった。
その具体的なアプローチの手法が違っていただけだと感じた。
苛烈な状況にあってこそ、自分を無にして、それをやり遂げた人たちがいた。
70年前も今も、一緒に戦う(働く)仲間を想い、日々、行動・発言をしなければならないのは変わりはない。
そんなことをあらためて考えさせられた。