忘れやすい日々のための映画ブログ

忘れっぽいので、過ごした日々・趣味の時間を大切にしていきます。

向き合ったその先/サンドラの週末

『サンドラの週末』。全くもって興味を引かないタイトルだが、
そのタイトルをつけたことに興味を惹かれてレンタル。

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ストーリー
体調が思わしくなく休職していたサンドラ(マリオン・コティヤール)は、復帰のめどが立った矢先の金曜日、ボーナス支給のため一人のクビを切らなくてはならないと解雇を通告される。ところが、同僚の計らいで週明けに職員たちが投票を行い、サンドラのためボーナス返上を受け入れる者が半分以上になればクビを回避できるという。その週末、月曜日の投票に向けサンドラは同僚たちの説得するため奔走するが……。 (シネマトゥデイ

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▼感想(軽くネタバレします)
サンドラは弱いです。めちゃめちゃ弱っちい。
彼女は鬱病から復職しようとした矢先に、衝撃の事実を知る。
「サンドラの復職」or「自分たちのボーナス(1,000ユーロ)」かどちかを選ぶという投票が会社でされており、ボーナスで決まっていた事実を知る。ちなみに1ユーロ134円(2015年12月時点)なので、ボーナスは13万円くらいだ。
「同僚は私よりボーナスを選んだ」という事実が、病み上がりのサンドラに追い打ちを掛ける。
サンドラは弱っちいから、そんな衝撃に耐え切れずにすぐ凹む。凹んで無気力になって、逃げようとする。ああ、なんて弱い。(これ、社会人1年目の俺だわ、と。そこに自分を重ねてしまった)

でも同僚も3人くらい仲間になってくれ、サンドラの旦那が闘おう!と。
まずは自分が勤める太陽光パネルの社長に再投票の依頼をしにいく。
社長は「会社が苦しいんだ。競合が悪いんだよ。でも再投票は認める」と言う。
(この言い分が海外っぽいなーと思う。てめえが馘首にしたくせに、競合のせいで取引が減っただと。事実なんだろうけど、企業努力が足りないんじゃないの?と言いたくなるが言える立場にいないので静かにしておく。)

旦那に八つ当たりしながらも、週末に同僚たちの家を1軒ずつ回っていく
(この間、自分の中でサンドラ喚いてばっかりでガキかよ。
でも喚きたい気持ちもわかるわー、という心境が交互にやってくる)。
サンドラは人づてに同僚の住所を探し当て回っていく。
(同僚なのに住所知らねーのかよと思ったけど、自分もそんなもんだなと思い反省)

▼同僚たちの反応
同僚たちを1軒ずつ訪れていく。「私に投票して」と言いにいくわけだ。ここがこの映画の見所だろう。
同僚の反応は様々で、最初からサンドラに味方してくれる人、娘への仕送りでどうしてもボーナスが必要な人、
職場では仲よかったと思ったのに子供使って対応して居留守する人、
意見の違い(というより息子がクズ発言しすぎ)で親子で喧嘩する人、
旦那のいいなり(DV?)でサンドラの味方に立てない人、
契約社員が故にサンドラに投票しないよう主任に脅されている人、
サンドラに「お前なんかいなくても仕事が回るから、投票で勝っても君を雇うかね?」と嫌味を言ってくる人。
断る人は社長同様に「助けたい。でもこっちも苦しいんだ。生活するのにボーナスがどうしても必要だ。
君かボーナスかは会社が選ばせた。私に悪気はない」という回答をする。

みんなボーナスは欲しいだろう。言い分も様々だ。みんな生活の背景や状況が異なるから。そんな中でも協力してくれる人がいる。そのことがサンドラを勇気づけて行く。

最初は「ムリムリ。私なんて無理」だったのが、最後のほうでは自分から行くと言い出す。
これは会社との闘いでも同僚との闘いでもない。

自分との闘いだ。サンドラは「働きたい」という意志がある。
でもそのためには同僚を「説得」をしなきゃならない。

でも断られるのが怖いから、意志を隠して、やる前から逃げようとしていた。断られてあたりまえ、というマインドが大切だと改めて思う。
同僚が自分よりボーナスを取ったという事実に打ちのめされて、立ち上がろうとしていなかった。

でも周囲の助けで立ち上がった。同僚へは自分の気持ちを素直に伝えた(しつこく説得せず、事実だけ伝えた)。すると理解し、協力してくれる人が現れた。この時点でやらずに逃げるというのは間違っているというのがわかる。
そして協力者の存在が彼女を強くし、向き合い続けることで高潔にしていく。

ラスト、彼女は投票であと少しのところで破れる。同僚に感謝し、抱擁し、会社を去ろうとする。
すると、社長に呼ばれる。「ここまで出来ると思わなかったから、契約社員を切って、君を雇う」と提案される。
でも彼女はきっぱりと断る。会社を去る彼女の顔は高潔で一番輝いているように見えた。


自分と向き合って見えるものがある、そんな風に感じさせてくれる映画。