運命に抗う/きっと、星のせいじゃない
劇場公開終了したかと思ったら、まだやっていたので土曜日のレイト・ショーで鑑賞。フォーラムさん有難うございます。カップル×1、母子家族連れ×1、女性の一人鑑賞×4、私。映画のラストでは鼻水を啜る音が聞こえてきました。
原作はジョン・グリーンによる全米ベストセラー小説「さよならを待つふたりのために」。Amazon.co.jp: さよならを待つふたりのために (STAMP BOOKS): ジョン・グリーン, 金原 瑞人, 竹内 茜: 本
その良作の脚本を「(500)日のサマー」の脚本家が担当。
サマーはラストシーンの台詞でニヤけたのを覚えており、今作も期待していた作品。
以下あらすじ
末期ガンながらも、薬の効果で深刻な状態を免れているヘイゼル(シャイリーン・ウッドリー)。
だが、学校にも通えず、友人もできず、酸素ボンべなしでは生活できない。
そんな中、ガン患者の集会で骨肉腫を克服したガス(アンセル・エルゴート)と知り合う。
ヘイゼルに惹(ひ)かれたガスだが、彼女に距離を置かれてしまう。ヘイゼルに振り向いてもらおうと、彼女が敬愛する作家にメールを送って返信をもらうことに成功するガス。それをきっかけに、二人は作家に会おうとオランダへ旅行に出るが……。
(シネマトゥデイ)
カップル鑑賞 おすすめ度 8/10
特に付き合いたの方々にオススメ。お互いの良い面しか見えていない状況に拍車がかかります。
お互いの悪い面が見え始めた少しやばいカップルにも大切にしなきゃ、と思えるホイミ効果があります。
ゼノンのパラドックスは勉強していったほうがいいです。ここがわからないとちょっと損します(しました)。。。ゼノンのパラドックス - Wikipedia
以下、ネタバレ。
見せ場は主人公ヘイゼルが愛読する本の著者にオランダに会いに行くシーン。
難病の主人公に対して医者は海外旅行なんて絶対ダメだ!と否定する中、諸々の調整をして、やっとの思いで実施したオランダ旅行。
前日はレストランで夢のような食事。初老のウェイターから食事代は作家ピーター・ヴァン・ホーテンのおごりだという。
ヴァンホーテンはめちゃいい人なんだと主人公たちと一緒に期待をふくらませる。
そもそも作家に会いたい理由は本の登場人物たちのその後を知りたかったから。
本の主人公は亡くなってしまうのだけれど、残された者たちのその後が書かれていないので、それを教えて欲しいというもの。
ヘイゼルは自分がどうこうではなく、残された家族のことをずっと考えていることがわかる。いい子。。。涙。
で、期待をしていくわけです。自分を勇気づけてくれた作家にやっと会えると。
(私は昨日のウェイターがヴァンホーテンだったりするのかな?と安易な想像をしていました)。
胸を踊らせて到着すると、女性秘書が迎え入れてくれる。
しかし部屋の中が荒れていて、ヴァンホーテンの様子がおかしい(ファンからの未開封の手紙が床中に散乱という有り様)。
無精髭生やして、目はやや虚ろ。というのも昼間からガウンを着て酒を飲んでいる。
ヘイゼルの質問に答えない。答えないどころか罵りだす。以下うろ覚えですが、、、
「こいつらに(昨晩)飯を奢ったのか?(秘書への問いかけ)」ケチくせえ。。。
「その管(酸素吸入器)は主人公になったつもりか?」
「お前らは病人だから特別扱いされると思っているのか?」
「お前らは欠陥品だ」などなど。。
しまいには大音量でダンスミュージックをかけ始める。
まさに世界中の糞を集めて作った糞野郎を具現化したようなやつ。
でもこのシーンが映画に深みを与えていると思う。
世間には少なからず、ヴァンホーテンのように考える人もいるはずだ。
ヴァンホーテンはそのひとたちの代弁者で、その凶器的な問いかけに対して主人公は前を向いて答える。
それはヘイゼルが純粋に残された家族のことだけを考えているからできることだということがわかる。
※その後にアンネの家を回るシーンのほうも結構鬼畜だったかな。。。
ヴァンホーテンと対象的なのがヘイゼルの両親。しっかりとヘイゼルがいなくなってしまった後に備えている。
見方によってはなんて親だと思うかもしれないが、これは主人公を安心させるため。
ヘイゼルの両親が本当にいい人たちで、この点は本当に救いでした。
※この家族仲が悪いとまた違う映画&時間が足りなくなる。
ちなみにヴァンホーテンが糞野郎になった理由は娘が病気で亡くなったから、というのが後のガスの葬式で判明。
ヴァンホーテンはヘイゼルへトロッコ問題の話をしますが、
当然、ヘイゼルには聞いてもらえません。ヴァンホーテンも辛い思いをしたというのはわかります。トロッコ問題 - Wikipedia
▼タイトルについて
原題は『The Fault in Our Stars』。直訳すれば、星=星回り=運勢≒運命の失敗。
これはシェークスピアのジュリウスシーザーのセリフ、
『The fault, dear Brutus is not in our stars, But in ourselves, that we are underlings』かららしい。
適当に訳すと『俺らがこんな状況になっているのは運命のせいではなくて、自分たちのせい』。
以上を踏まえて原題を訳すと『The Fault in Our Stars』=『運命≒星のせいor星の失敗』。
ヴァンホーテンが「お前らは欠陥品だ」という台詞があったことを考えると『星の失敗作』とも取れます。
その点『きっと、星(≒運命)のせいじゃない』という原題は『運命になんて従わない!』という意志の現れなのかなあ、と。