忘れやすい日々のための映画ブログ

忘れっぽいので、過ごした日々・趣味の時間を大切にしていきます。

サイコパス/ナイトクローラー

暗闇の中にジェイク・ギレンホールが佇む不気味なポスター。
その手には一台のカメラ。不穏な空気満載の画に興味をそそられ鑑賞。

http://iwiz-movies.c.yimg.jp/c/movies/pict/p/p/f9/c4/167027_01.jpg

 

ストーリー
人脈も学歴もないために、仕事にありつけないルイス(ジェイク・ギレンホール)。たまたま事故現場に出くわした彼は、そこで衝撃的な映像を撮ってはマスコミに売るナイトクローラーと呼ばれるパパラッチの姿を目にする。ルイスもビデオカメラを手に入れ、警察無線を傍受しては、事件現場、事故現場に駆け付ける。その後、過激さを誇る彼の映像は、高値でテレビ局に買い取られるように。やがて局の要望はエスカレートし、それに応えようとルイスもとんでもない行動を取る。 (シネマトゥデイ

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以下感想(軽くネタバレします)
▼どんな話?
一言で言えば、サイコパスの話。
サイコパスのパパラッチが自分の目標を達成していく過程を描いている。
目標達成のためには躊躇せずに犯罪を犯し、人を支配し、欺き、陥れる。
本人は悪いことをしているとは思っていない。当然のことをしていると思っている。

▼ルイスって何者?
ルイスは上述のようにサイコパスだ。
野心に溢れ(そのためには人を陥れる)、勉強家で(相手を支配するため、ビジネス内容や相手の社内での立場などを徹底的に調べ尽くす)、行動力もある(平気で犯罪を犯す。人が死にかけていても助けない)。
とにかく自分は出来ると思っている(「僕は覚えが早い」という台詞が劇中に何回か登場する)。
本人にすればただ「機会」に恵まれていない。だからこんなことになっている。
そして、人の最期や不幸がビジネスになる「機会」に出会い、それをモノにする。完全に。
彼にすれば仕事は何でも良かったんだろう。

それがたまたまパパラッチだっただけだ。

 

▼なぜルイスが生まれたのか?
無職のルイスは定職にありつこうとしていた。
冒頭で盗品(銅や鉄)を廃品回収業者?に売りに行き、
そこの社長に自分を雇うよう実に流暢にプレゼンするが、
「泥棒は雇っていない」と一蹴される(でも主人公が持ってきた盗品は買う)。
また途中TV局のディレクターにも自分を雇うようプレゼンをするが、
ここでも相手にしてもらえない(でも主人公が撮ってきた人の最期を映した映像は買う)。
なぜ盗品を買うのか、なぜ映像を買うのか。それは欲しい人がいるからだろう。
使っているこっちが、観ているこっちが、ルイスを生み出している。

 

最近読んだ下記2作品で紹介されるサイコパスやパーソナリティ障害の思考がそのまま主人公のルイスだった。

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▼ルイスはどうなっていくのか?
特ダネを撮り続け、すべては彼の思いのままになっていく。
対等の立場だったはずがいつの間にか支配され(ディレクターは同僚から「お前はルイスそっくりだ」と言われる)、敵対するものは陥れられ(競合他社は車に細工され、事故にあい、瀕死(死んだ?)。その事故画像を売物にする)、逆らうものは殺され(ルイスは自分の部下が逆らったので、犯人に射殺されるよう仕向けた。そして彼の最期も売り物にする)、国家権力も欺き(警察の聴取にも堂々と嘘をつく。嘘を付くための準備にも余念がない)、自分の会社を守り、大きくするという目標を達成する。

終盤、警察がTV局のディレクターにルイスが撮影した映像を提出するよう要求に来た際には、「撮ったのはあの人。私たちは買っただけ。問題があればあの人に聞いて」と他人事だ。
ルイスが悪いように描かれているが、お互い様だろう、と思ったが、
すでにこの時点でディレクターの思考も結局ルーに支配されてしまっているのだなあと。

ラストシーンでルイスは自分の会社(制服もできあがり、社名入りの立派なバンもある)の新入社員に言う。
「僕は自分が出来ないことを君たちにはさせないよ」

でも彼に出来ないことなんてないのだ。

なにひとつ。自分の手を汚さずに殺人だってできちまうんだ。

 

一緒に働く予定の若者たちに幸あれ、と絶望した気分になった。