積み上げろ自信、自分自身で/『百円の恋』
基本的に邦画はDVD鑑賞が基本スタイルなのですが、
予告編が見事で観たいと思った作品。
こんなかわいい安藤サクラさんが
こんな風になる。役者さんてすごい。
ストーリー
32歳の一子(安藤サクラ)は実家でだらしない毎日を過ごしていたが、離婚して実家に戻ってきた妹の二三子といざこざを起こし、一人暮らしをすることに。100円コンビニで深夜労働にありつき、相変わらずな日々を送っていたものの、ボクサーの狩野(新井浩文)と恋に落ちる。狩野との幸せな日々はすぐに終わってしまうが、ある日、たまたま始めたボクシングが一子の人生を変える。 (シネマトゥデイ)
80点。
両隣が60代と思しきおばちゃんとおじちゃんでしたが、
一緒に笑い声を上げながら、映画鑑賞。
こういう人たちと一緒だと映画が一層楽しくなります。
この映画のテーマは『働くことの大切さ』と『目標と自信』なのか。ダメニートだった主人公は働くことで自分の立ち位置を理解して、ボクシングの試合で勝つという目標を見つける。
働けば嫌なこともあるけれど、主人公は働いていたからこそ、一人暮らしが出来て、
狩野に出会うことができて、ボクシングをすることが出来た。まずはこれが全てと思わされた。↓主人公が働くことになるお店。
そして目標設定。一子はボクシングを始めてから、どんどん綺麗になっていく。驚くほどに。目つきも、声の大きさも、スタイルも。そしてボクシングの試合で勝ちたい、という目標が決まる。
それに向けひたすらトレーニングをし続ける。誰に頼むわけでもなく、一人で黙々と。それが一子の自信になっていく、自信はどんどん積み重ねられ、確かなものになっていく。
自分自身で積み重ねた自信ほど強いものはない。無駄なプライドもない。あるのは目標を達成したいという素直な気持ちだけ。
対照的なのが新井浩文演じる狩野。
37歳。本気を出していないから失敗してもOK=傷つかない自分に甘んじている。
現実を見ないで、本気じゃないからしょうがない、と言い訳を探し続ける姿は辛い。
以下感想とネタバレ。
主人公の一子は32歳ダメニート。髪はボサボサ、服はぶかぶか。体はタプタプ。
煙草をプカプカ。
外での声は小さいが、内弁慶。実家の弁当屋の手伝いもせずに、
TVゲームとジャンクフードの日々。ゲームでは妹の子供にも手加減なしで勝つ。
↓ダメさを全て表現した1シーン。
この一子が妹との大喧嘩で家をでることに。必然的に働くことになる。
バイト先はいつも使っていた百円コンビニ。人が足りないようで即採用。
働いたら働いたでいろいろある。鬱病の店長、喋り続ける40代バツイチ男、マジすか連呼の若者、クッソ嫌味な店長代理、廃棄弁当を取りに来るちょっとイッちゃっているおばちゃん。
でもそんなバイト先でいつも前を通っていたボクシングジムのボクサー狩野と出会う。狩野はバナナを買いに来て、バナナを置いていくという童貞臭い作戦で一子をデートへ誘う。
なんとデート先は動物園。
一子「なんで私なんか誘ったの?」
狩野「断られないと思ったから。怒った?」
一子「いや、別に」
狩野「チッ、盛り上がんねー」
と言った具合に盛り上がらないまま終了。
でもまたバナナ作戦で狩野が金を忘れたふりをして、自分の試合のチケットを置いていく。一子は狩野の試合をよく喋る同僚と見に行くことに。
狩野はあっさり試合に負ける。負けてもたいして悔しそうじゃない。たぶん本気じゃなかったんだろう。
なぜか帰りに3人で飯。一子がトイレに行っている隙に
同僚が一子と付き合っていると狩野を騙して、狩野は怒ったのか、ショックだったのか帰ってしまう。
一子は帰りに無理やりラブホに連れ込まれ、同僚にレイプされる。一子は抵抗ができない。
ここが結構観ていて辛かった。
それきっかけか、狩野に会いたかったのか、その両方か。一子はボクシングを始める。このあたりでだんだんと生き生きしだす。ふとしたことで無職の狩野が家に転がり込んでくる。流れでやっちゃう。
束の間の同居で、一緒に狩野が作った飯を食っているシーンが好き。
一子『明日は休みだから、私が御飯つくるね』
狩野『は? 嫁気取りかよ(うろ覚え)』
このセリフを聞いて、37歳の狩野は自分の人生を決めきれないでいるのだと思った。
結局、豆腐屋のバイトを始めたと思ったら、バイト先の女のところへ行ってしまう(リアル)。
のちにわかるのだが、ボクシングに本気で打ち込む一子を見ているのが辛かったから出て行ったという。子供か。。
自分は何もしていないのに、頑張って輝いている人を間近で見るのは辛いのはわかるが、がんばれよ!!
一子はとにかくボクシングに打ち込む。仕事中もひたすらシャドウボクシング。
そんなこんなでプロテストに合格した主人公は「試合をしたい」とジムのオーナーに直訴するも、
「自分に何もないからってボクシング初めて、試合で勝って何か残したいなんてそんなに甘くないよ(正論・うろ覚え)」と言われる。
でも主人公は目標が明確だから気にせずOKを貰えるまで練習を続ける。
目標がある人間は強い。周りがなんといっても気にしないで「考える」ことに時間を使える。
天は自ら助くるものを助くだ。けが人が出たため、急遽代打での試合が決まる。
試合直前、リングへ行く途中に一子のテーマソング百円コンビニの歌が流れる。
ジムオーナーが「なんだこの歌?」と問いかけると、
一子は「私はどうせ百円程度の女ですから」と切り返す。
そこには無駄なプライドは欠片もない。あるのは勝ちたいという気持ちだけ。
リングに上った後の試合のシーンは胸が熱くなった。
1ラウンドでKOされて起き上がれなかった狩野とは違い、一子は倒されても倒されても立ち上がる。喧嘩していた妹も必死の応援。少し泣きそう。
本当に防戦一方でボコボコにされるが、闘うことを辞めない。
頑張る姿に左フック決めろ!!と思わず心のなかで叫んでしまった(笑)
ついに一子の左フックが相手に決まるが、カウンターで撃沈される。KO負け。
オーナーの言うとおり、甘くない。
でも闘う姿を観ていた家族や狩野の中では何かが変わったようだった。
試合後に一子は「勝ちたかった」と泣きじゃくる。
前半の試合に負けた狩野とは全く逆。本気で取り組んでいたのがわかる。
そんな一子を狩野は「飯でも行こう」と連れていく。
やっと狩野は人生を決めたのかなと思った。
2人に明るい未来があるかはわからないけれど、ひとりよりは2人のほうが楽しいことには違いなさそうだ。
END。