全員イッちゃってる/海にかかる霧
最近韓国映画を観る機会が増えています。特にサスペンス。
理由は怖くて骨太で想像を超えてくるエンタメ作品だから。
直近でも「悪魔は誰だ」「テロ・ライブ」「かくれんぼ」など枚挙に暇がない。
本作もサスペンス、という1点にのみ惹かれて鑑賞。それ以外の前情報なし。
結論としては、SASUGA!という言葉に尽きます。
観終わった後に疲れというか、驚くくらい力が入っていたことに気づきます。
ストーリー
チョンジン号は一時、大漁に沸いていたこともあったが、最近は不漁続きで船の維持すら難しくなっていた。
八方ふさがりの中、船長チョルジュ(キム・ユンソク)と年少の船員ドンシク(パク・ユチョン)を含む乗組員たちは、
やむを得ず中国からの密航者たちを乗船させることに。そして決行の日、海上で中国船から密航者を迎え入れるが……。(シネマトゥデイ)
韓国サスペンスのすごさは常に何か起こりそうな不穏な空気と容赦ない暴力描写だと思っています。
前者は登場人物の持つ異常さの演出。つまり役者がめちゃめちゃうまい。
後者はそのバリエーションの豊富さ。殴る蹴るはあたりまえとして、轢く、撥ねる、刺す、抉る、ぶった切る、叩き切る……。
すべての暴力が手抜きなしで行われています。
観ている側が「そこまでするのか。。。」と目を覆いたくなる。
叫んでも止まるわけもなく、映画は全力疾走。
個人的なその最高作は「チェイサー」ですが。
本作もその両方を兼ね備えた作品になっています。しかも実際にあった事件をベースにしているようです(テチャン号事件)。
5人の船員が狂気に駆られて行く様が見もの。船の治安を守るために暴力で統制を図る船長、船長に追随する(考えない)者、性欲の塊になる者、金欲者、良心の呵責に苦しむ者、大切な人を守る者。その全員が何かに取り憑かれているかのように狂気的に動き回る。
客観的に見ると全員が狂っているけど、本人たちは狂っていると思っていないんだろうなあと。
異常な状況に置かれて、その中で生きるために必死に振る舞っているのだろうと。狂わないために狂うというか。。
霧がかった船の中で行われていて、実は夢なんじゃないかと思わせられる。
ラストの後日談が霧の中の船上での出来事が夢じゃなかった、
ということを際立たせる。