どこで損切りするか/『ディアトロフ・インシデント』
「面白い映画があった!」と普段冷静な高2の弟がおすすめしてきた作品。
思わず「え、ディ? 何?」と聞き返す。聞いたことがないタイトル。
どうやら弟は期待せずに観ていたら、どんどんと引き込まれていったよう。
実話が絡んでいるので、それが拍車を掛けたのか。
以下解説
1959年ソビエト時代、スキーでウラル山脈を越えようとした9人の登山グループが遭難。
その後捜索隊に発見された遺体の5体は極寒の中ほぼ裸体で、そのうち数名は激しく外的損傷を受けていた。
残り4遺体は数ヵ月後にキャンプ地から離れた崖下の雪中から発見、中には舌が失われていたものまであった。
さらに犠牲者の着衣から高濃度の放射能が検出、事故現場から半径数キロ圏内では数ヶ月間に謎のオレンジ色
の光源の目撃談が相次ぐなど不可解な謎が多く、当時の政府からは調査結果が公表されないままソ連時代の崩壊を迎え、
「ディアトロフ峠事件」は人々の記憶から風化されつつあった。
今、その謎を解明すべくアメリカの5人の学生が動き出す。 そして彼らは、
決して踏み込んではならなかった「世界で最も近づいてはならない」ディアトロフ峠の現場へと辿り着く…。(公式ページ抜粋)
以上
70点。
悪くない。
けど、物足りない。今日の晩飯トンカツだと思ったら、ハムカツだったみたいな。
悪くないけど、もうちょい厚みが欲しかった、という。。。
※ハムカツはハムカツで良いところもあるし、僕はハムカツが好きです。
映像は『ブレアウィッチ・プロジェクト』のようなドキュメンタリータッチな感じ。
『クロニクル』の既視感が呼び覚まされます。。なお、画面酔いをする心配はないので、ご安心ください。またこれ系の映画で雪山が舞台の映画を初めて観ました。そういう点で斬新でした。
なお、題材となっている『ディアトロフ峠事件 - Wikipedia』というのが、めちゃめちゃ興味深い。
これを読むだけでも結構満足できます。
ストーリーには伏線がちょいちょい張ってあります。
その半分は回収され、半分は放置されます。これは時間制限のせいです。
放置されたほうはそのままです。誰も片付けません。自分の心の中にだけ残ります。
一言で言うと究極の『損切り』映画です。
自分だったら、どこで引き返すか。それを考えながら観ると面白いです。
さがっても、損切りせずに、いつかあがると思って放置しているうちに、
完全無欠の塩漬けになる株式投資の感覚を味わえます。
Amazon.co.jp: 「あきらめる」のが上手な人、下手な人こだわらない、逆らわない、求めない (角川文庫): 斎藤 茂太: 本
以下感想&ネタバレ。
大学の授業で『ディアトロフ峠事件』を知った主人公が「記録映画つくりたい!!」
ということで、仲間を集めて、アメリカから一路ロシアを目指します。
主人公&音声(女)、登山家2名&カメラマン(男)の男女5人パーティーです。
場面が切り替わって
・アメリカから来た主人公たちが雪山で行方不明になった
・ビデオカメラはロシア政府に回収されたが、ハッカーが映像を入手した
とニュースが流れ、映像の一部が映し出されます。
映像には暗視カメラに映る主人公の女性と男。
「正夢だわ。ここからずっと出られない」的なことを言って、映像は終わります。
そして彼らがどのような末路を辿ったのか、本編が始まります。
冒頭から20分くらいはロードムービーを観ているようです。
空は晴れているし、旅は楽しいなあ~というのが画面から伝わってきます。
正直、話が展開がしないのでちょっと飽きてきます。
ロシアのある街で生存者の話を聞こうと病院を訪れたところ、職員に拒否されます。
軽装で外に出てくるパンクロッカーみたいな職員に少し笑います。
2階の窓を見やると生存者と思しきおじいちゃんが文字の書かれた紙を掲げていますが、
ロシア語なので誰も読めません。おじいちゃんはすぐにいなくなってしまいます。
やっと不吉な空気が漂い始めます。
ドライバーとして雇ったロシア人に訊ねると「近づくな」という意味だと教えてくれます。この手の映画に良くある展開です。当然引き返しません。
続いて、当時遺体を発見した人(おばあちゃん)にインタビューをしたら、
「ディアトロフ事件の登山メンバーは9人だったはずなのに、11人いたの」と
不思議なことを言い出します。
「え? 11人?」とみんなびっくりですが、詳しいことはわからずじまい。
ちょっと前のめりになります。
そして、いよいよ山登りを開始するわけです。いよいよかと。
生存者からは近づかないよう警告され、遺体発見したおばあちゃんには11人いたんだと言われる。異国のしかも雪深い、さらに不可解な事件のあった峠。そこに登ろうとする主人公たちに敬意を感じ始めます。
ここで自分だったら帰るかなー、帰んないかなー、と考えながら楽しむ映画なんだと思いました。
雪の中を進んでテントを張り一夜を過ごします。
翌日、外にでるとイェティのような足跡があります。
しかもテントの周辺にしかない。みんなパニックです。宇宙人が上からおりてきたんじゃないか? イェティ? ホワイトタイガー? やばくね!!と焦り始めます。
しまいには主人公がやらせで作ったんじゃないかと言い始めるものがでるなど、
仲間内で揉め事のような感じに。
でも結局誰も引き返しません。まあ自分も引き返さないかーと言った感じです。
さらに進むと百葉箱?のようなものがあります。
中をのぞくと肉塊のようなものが。
急展開。驚く主人公たち。実は誰かの舌!! なんでここに、、、、。
パニックになり、帰るか帰らないかの議論をしますが、結局帰りません。
確かここらへんで「ディアトロフ隊も行方不明になる前に、
オレンジ色の光が見えた」というような話が出てきます。
加えて主人公が「小さいときから同じ夢を見る。雪山に扉があってそこに入るけど、中は真っ暗」という話をします。
聞いていたカメラマン?は大して気にも止めなかったと思います。
夜が訪れ、また野営です。主人公とカメラマンは周辺の放射線量が高いので、
ガイガーカウンター片手に辿って歩きます。
雪に覆われたところをかき分けると、なんとなんと扉を発見します。
『LOST』のような超展開。しかし昼間のパニックの件もあり、他の3人には黙っていることにします。そりゃやらせだのなんだの言われたくないですしね。
一方のテント村。
この手の映画にありがちなエロシーンがないなー、と思っていたら始まりました。
音声さんと登山家です。家族で観ていたので、ちょっと気まずい空気。始まったと思ったら事後シーン。ホッと胸を撫で下ろします。
ところがこいつら2回戦を始めようとします。
このクッソ寒い山の中でやるセックスはさぞ気持ち良いのでしょうか。
ドン!!!!
突如爆発のような音がします。2回戦の始まりの合図?!と思いましたが違いました。
雪崩発生です。セックス開始直前の2名は慌てて外にでますが、間に合わず。
女が死にます。男は助かりますが、大けが。自業自得な感じがしますが、かわいそう。
(主人公が扉のことを話していたら、助かっていたのかもと思いました)
クッソ寒い雪山にテントもなく、薄着で一夜を過ごします。
死にかけていた登山家1名は動けない状態。
翌日になり「助けを呼ぼう」ということで、確か登山家?が照明弾を撃ちます。
撃った後に「オレンジ色だ」と言います。死亡フラグです。
ちょっとすると2名の人影。「助けにきたぞー!! そこを動くなー」と。
主人公たちは助かった。と思いますが、
「早すぎる。しかも軽装だ」と勘の良い誰かが言います。
確かにそうだと、慌てて逃げようとしますが、いきなり銃撃してきます。
怪我した登山家は『俺を置いて逃げろ!』と叫んだ直後に、あっさり撃ち殺されます。
逃げ惑う3人。扉の方へ。直前でもう1名の登山家が胸を撃たれます。
慌てて中へ。扉をしめます。この扉、なぜか外に鍵があるため閉じ込められる格好に。
真っ暗闇。そうこれが冒頭の「正夢」に出てくる扉です。
電気をつけると長いトンネル。
何かの研究所だった模様。今度は「いま何かに触れた!?」とパニクる主人公。
外には出られないので、奥へ進む3人。撃たれた1名は動けなくなります。
さらに奥へ進む2名。
ここで『フィラデルフィア計画 - Wikipedia』の話が出てきます。
※都市伝説と言われている話を持ち出してきたので、
ここでちょっとテンションがさがります。
別な部屋には舌が無い死体(百葉箱の中の舌は彼のモノ?)、
焼かれて積み重ねられた死体。よくみると歯は人間のそれではありません。
そして自分たちが持っているのと同じ。ビデオカメラがあります。
映っている映像も同じです。なぜ?? と思ったときに人間の形をした
クリーチャーが襲ってきます。
しかも動きがやたら早いと思ったら、ワープしているよう。
ここで登山家は殺されます。逃げまくる2人。奥の部屋へ。
そこにはワームホールが。。。。逡巡するも、外には化物。絶体絶命です。
意を決してワームホールへ突入。
直後、雪山の映像になります。主人公たちの衣服がみえますが、顔が見えません。
ロシア軍数名が取り囲んでいます。すると民間人の若者2名が来ます。
うち1名が「11名いた」と言っていたおばあちゃんの若かりし頃だということがわかります。そう、タイムスリップしたのです。軍人に例の研究施設に運ばれる主人公たち。
見てくれはあのクリーチャーです。
ワームホールで過去へ行く過程で変異したと考えられます。
主人公たちは山へ行く前から、すでに行ったことになっています。パラドックスです。
夢に見ていた理由も不明ですし、百葉箱にあった舌の理由も不明です。
誰も説明してくれません。もう映画は終わっているのです。
教訓『引き返そうと思ったときには手遅れ』