前情報あった方が楽しめます/イミテーション・ゲーム
ストーリー
第2次世界大戦下の1939年イギリス、若き天才数学者アラン・チューリング(ベネディクト・カンバーバッチ)は
ドイツ軍の暗号エニグマを解読するチームの一員となる。高慢で不器用な彼は暗号解読をゲーム感覚で捉え、
仲間から孤立して作業に没頭していたが、やがて理解者が現れその目的は人命を救うことに変化していく。
▼前情報はあったほうが良い
過去に暗号機に焦点を当てた映画があったのかわかりませんが、私は初めて観ました。
結論からいうと、『エニグマ』という暗号機がどの程度すごかったのか、下調べしてから観に行ったほうが楽しめます。
劇中である程度説明をしてくれるのですが、説明がふわっとしているからなのか、
私のアタマがふわっとしているからなのか(たぶん後者)、いまひとつピンと来ない。というかピンと来ないシーンが結構あった。
エニグマは10人の人間が1日24時間働き続けても、全組合せを調べ終わるまでに2000万年かかるらしい。
私見ですが、前情報が必要な映画ってエンタメではなく、どちらかというと勉強に近いんじゃないかなあ。史実映画は仕方ない部分はありますが。。。
「エニグマ暗号器をポーランド軍から貰った」という台詞があるのですが、
なぜポーランドがエニグマ暗号器を持っていたのか、というのも知っていると面白い。当時のポーランドは東にソ連、西にドイツといった具合に自国の存在が脅かされていたそうで。
日露戦争に踏み切った日本みたいな、半端ない切迫感があったのかなあと思います。
この方の解説が非常にわかり易かったです。
▼天才×熱意=最強
エニグマの凄さはわからないものの、暗号解読のために頭脳的にすごい人たちが
ロンドン郊外の街(ブレッチリー・パーク)に集められていたのはなんとなく理解。
主人公アラン・チューリングもその一人。アスペルガー症候群?なのか、
人の気持ちが理解できず、周囲と意図せずして衝突を繰り返してしまいます。
それでも暗号を解読したいという熱意とアラン自身が周囲を理解しようと努力することで、衝突していたメンバーも協力をしてくれるようになっていくのはなかなか気分が良かった。
どちらかというと時間の経過にともない、
「アランて、ただ純粋に暗号解読したいだけで、俺たちへの接し方に他意はないんじゃね?」という感じに近い。
何はともあれ熱意ってめちゃめちゃ大切だよな、とあらためて理解。
▼アンテナは常に張っておくべし
天才の彼は最初から他メンバーと課題解決のアプローチが違います。
彼にとっては他の皆がなぜ自分と違うアプローチをするのか理解できず、衝突の原因になるわけですが。
アランは大型冷蔵庫8台分(適当)サイズの暗号解読機を作り、実際に稼働させる。でもうまくいかない。
つまり暗号解読ができない。仕方ないから酒でも飲もうぜ!とバーに飲みに行く。
そこで同僚の女性にあるドイツ人の話を聞かされ、それをヒントに暗号解読ができちゃう。史実もそうなのか不明ですが、
常にアンテナを張って、リフレッシュすることで新しいものが見えたり、仕事のヒントになったり、というのを実感。
頭いい人ってたぶん常に考えていて、そこら中からヒントを得ていて、自分の中に取り入れて、また考えて、というのを日々繰り返していると思うんです。だから急に質問されたり、難題を与えられたりしても、こなせちゃうんじゃないかなと。
つまり才能だけでなく努力の量も半端ない、ということかと。
▼好きな場面
個人的に好きだったのは、アランがジョーン(キーラ・ナイトレイ)に
「僕はゲイなんだ」と告白するシーン。
アランは暗号解読にはジョーンの力が必要だと考えて、結婚するわけですが、結婚したあとにこの告白。
普通は大ショックですが、ジョーンは「知ってた」と一言。
そして「それでもいいじゃないの」と。キーラ・ナイトレイって、やっぱ男前だと。こんな器の大きな人間になりたいなあ、と思いました(遠い目)。
↓めちゃめちゃ幸せそうなんですけどね。。。。
▼驚きの事実
暗号解読をしたイギリス軍でしたが、実はそれを長きにわたって秘密にしていたようです。だって暗号解読したってドイツ軍にバレたら、また暗号を複雑化してしまうから。ということで、ドイツ軍の作戦をすべて阻止せずに、阻止する作戦とそのまま実行させる作戦に分けていた。
つまり救える命を「あえて救わない」という判断をしていたわけで。
さすが欧米は合理的!ではなく、これは彼らにとってひどく辛いことだったのは想像に難くありません。
暗号解読が出来なかったときも、解読できたあとも、戦争中はずっと辛い想いをしなきゃいけなかった。
戦争が終結したあともこの事実は伏せられていて、ブレッチリー・パークで働いていた人たちは「大変なときに行方不明だった人」ということで、
非難されたり、実際に失職したり、大変な思いをしたそう(悲しすぎる)。
当初アランのチューリングマシンは軍上層部に理解をされません。
特にデニストン中佐はアランを忌み嫌い、せっかく完成したマシンを止めようとすらします。↓デニストン中佐
人は理解できないもの、言葉で定義できないものを恐れると言われます。自分もそうです。デニストン中佐は当時のイギリスのマジョリティを代表した登場人物だったのかもしれません。
だから何かにつけて、嫌味を言い、邪魔をしようとしたのでしょう(実際暗号解読まで時間はかかっていたが)。
理解されないゲイの自分。理解されないチューリングマシン。
アランは自身のチューリングマシンに幼少期に好きだった男の子の名前をつけています。エニグマ暗号機を解読することで、その存在価値を証明したかったのでしょうか。